改正民法ー債権譲渡制限特約についてー
この記事を書いたのは:前田 大樹
アサヒ君
債権譲渡制限特約が改正民法により変わったと聞きましたが,改正前民法の下においては,譲渡禁止特約に反して譲渡してしまったらどのように扱われていましたか?
弁護士
改正前民法においては,債権の譲渡禁止特約が付されていた場合,その特約に違反した債権譲渡の効力は,原則として無効としていました。
しかし,改正民法において,譲渡制限特約に違反した債権譲渡は有効と改められました。
アサヒ君
債権譲渡制限特約ってなぜつけるものなのですか?
弁護士
債権の譲渡禁止特約は,過払リスクの回避や譲渡に伴う手間の回避,新債権者による過酷な債権回収の防止,特定の第三者との取引回避などを目的として締結されます。
アサヒ君
改正民法の下では,譲渡制限特約に違反しても有効になるとしりましたが,債務者は保護されなくなったのですか?
弁護士
先程述べたような債権譲渡制限特約の目的を達成するため,譲渡禁止特約により得られる債務者の利益を「弁済先固定の利益」と呼びますが,改正民法下でも,この弁済先固定の利益を確保するため,悪意の抗弁(466条3項)と新設された権利供託(466条の2)という手段が認められていますよ。
アサヒ君
悪意の抗弁とはなんですか?
弁護士
改正民法により,債権譲渡制限特約が付いた債権の譲渡も有効として扱われるため,債権を譲り受けた人(譲受人)からの支払請求を原則拒むことはできなくなりました。
しかし,債権譲渡制限特約が付いている債権であると知って譲り受けた人は保護に値しないため,支払請求を拒むことができます。このことを悪意の抗弁といいます。
アサヒ君
わかりました!権利供託という規定ができたのですか?
弁護士
そうです。改正民法下においては,譲渡制限特約の付された債権の譲渡も有効となりますので,債権の譲受人が債権者であることは明らかとなりました。そうであれば,債権者が誰だかわからないという理由により供託することができません。
他方で,悪意の抗弁しか認められなければ,譲渡制限特約について,譲受人が善意・無重過失の場合に,債権者となった譲受人に対し弁済しなければならないこととなり,弁済先固定の利益が確保されなくなります。その事態を避けるために,譲受人の主観にかかわらず供託することができるようになりました。
このように,債権譲渡制限特約を付した債務者に不利益が生じないような配慮が,改正民法下においても施されております。
旭合同法律事務所では,改正法にしっかりと対応できるよう日々研鑽に努めております。どうぞお気軽にご相談ください。
この記事を書いたのは:
前田 大樹