労働問題

会社から借りた免許取得費用の返還について

この記事を書いたのは:福島 宏美

(太郎さん)私は、タクシー会社の従業員でしたが、色々人間関係で折り合いが悪かったので、先日辞めました。すると、会社から、入社のときに借りた普通二種免許の取得費用20万円の返還を求められました。返さないといけませんか。

(弁護士)もともと、どのような約束で借りましたか。

(太郎さん)契約書では、入社して2年間就労していたら、その返還を免除するという内容になっていました。

(弁護士)太郎さんの就労期間は2年以内だったということですか。

(太郎さん)はいそうです。半年くらいで辞めました。辞めたら、お金を請求されるだろうということは頭にありましたが、あまりにも上司との折り合いが悪くなってきていたので、耐えられずに辞めました。

(弁護士)そうでしたか。辛かったですね。

(太郎さん)先生、そもそもタクシーに乗るために免許を取得したのに、そのお金を返さないといけないのでしょうか。2年間も就労を余儀なくされているのも不当だと思うのですが。

(弁護士)確かに、労働基準法16条に、労働契約の不履行についての違約金の契約と、損害賠償額の予定を内容とする契約を禁止しています。使用者が負担した資格や免許の取得費用について、一定の期間の就労を余儀なくさせ、それができない場合に援助した相当額を返還させることについて、労基法16条に違反する場合はありえます。

(太郎さん)じゃあ、私の場合も、会社からの請求は違法だといえませんか。

(弁護士)労働基準法16条に違反するかどうかは、事案によって、判断が様々です。2年間就労しないと返還免除にならないことについて、それが労働者をどの程度退職の意思を制限させたものなのか、会社に負担してもらった金額や、会社からの資金援助によって得た労働者のメリットなどを考慮して、判断しているようです。太郎さんの場合、免責されるために2年間就労をすること、20万円を返還しなければならないこと、は太郎さんの辞職の意思を拘束させる理由になりますが、他方で、取得した免許自体は太郎さんのものですので、今後も利用できることを考慮して、乗務員の不当な拘束にならない、とした裁判例があります(東京地判平成20・6・4、コンドル馬込交通事件)。太郎さんの事案でも同様に返還を拒むというのは難しいと思います。

(太郎さん)そうなんですね。わかりました。

(弁護士)もともと、辞めた理由について、退職強要、パワハラが原因だったり、未払い賃金があるなどがあれば、それと相殺を求めることも考えられますので、一度、旭合同法律事務所豊橋事務所にご相談ください。旭合同法律事務所豊橋事務所では、労働事件に力を入れておりますので、ぜひ詳しくお知らせください。


この記事を書いたのは:
福島 宏美